【日本】企業ブログ管理の難しさ

ネット上の情報発信を強化しようとして、カベに突き当たる企業が増えている。消費者に積極的に参加してもらう新方式を思うように使いこなせないのだ。背景には、ネット上の力関係が変化していることがある。

 キリンビール子会社で健康食品を販売するキリンウェルフーズ(東京・江東)。最近設けたブログ(簡易ホームページ)の管理に頭を悩ませる。
 このブログは女性限定で、同社のダイエット食品の利用者や、関心のある人を対象に4月に開設した。体重や体脂肪率を書き込んで記録できる仕組みが好評で、すでに会員は5,300人まで増えた。ブログを見ながら製品を買い続ける人も多く、「効果は予想以上」とマーケティング部のは話す。
 ただ最近ではブログ上のやり取りが増え、他社製品の情報交換も目立ち始めてきた。キリンにとってはコストをかけてシステムを提供する意義が問われる状態だ。
 「ウチの製品の利用者に限定しよう」「それではブログの魅力が失われて元も子もなくなる」――ブログをどう制御するか、議論を始めた。
 
 ジャストシステムは、ネット上で自由な情報交換を行う会員紹介型のサイト「ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)」の利用を大幅に縮小する。
 大手SNSの中に日本語入力ソフト「ATOK」をテーマにしたコーナー(コミュニティー)を6月に開設。体験版ソフトのダウンロード情報や、社員との意見交換などが売り物で、会員数は予定を超えて1,600人まで増え、リンクした同社のホームページへの来訪件数も急増した。
 だが、会員数はすぐに減少に転じた。SNS担当の社員は一人で、話題がそれても修正は遅れる。質問への正確な回答を作成するのにも手間取り、その間に対応できない質問が増え続ける。これ以上のコストもかけられないとして、9月に入って情報更新を止めている。

 ブログにSNSと、新しい情報発信の形への期待は高まる。一方で、ネットが変化していることは忘れがちだ。
 企業のネットでの情報発信は従来、自社のホームページや、他サイトへのバナー広告が中心となってきた。最近登場した、個人のホームページで商品を推薦してもらうアフィリエイト(成果報酬型広告)プログラムも含め、こうした形式ではあらかじめ用意した掲示内容を見てもらえば済む。
 一方、ブログ、SNSは不特定多数の参加者を集めて臨機応変に情報を発信できるのが特徴。例えばメーカーが自社でブログサービスを始めれば、製品に興味を持った消費者が次々と意見を書き込み、自己増殖ともいえる拡大を始める。
 的確に対応、巧みに議論を盛り上げれば自社製品への支持を増やすことが可能。ただサービスの良さが期待されている分、回答や情報提供が遅いと利用者が興味を失うのも早い。素早く回答したり、脱線を防ぐには人数とノウハウが必要だ。
 一般の利用者が主導権をとるため、ホームページの延長のつもりで取り組むと制御できなくなると業界関係者は指摘する。これまで、ネット掲示板で自社に不利な情報が書き込まれた場合はその運営者に連絡すれば対応が済んだが、自前でブログやSNSのコミュニティーを運営するのははるかに難しい。
 
 NTTデータの藤村剛課長代理は「顧客と直接接点を持ちたい企業にとってブログ、SNSなどの効果は大きい。ただ自前で成功させるには覚悟が要る」と話す。
 今後、ネット上の情報発信については、ユーザー参加型の場を積極的に立ち上げる企業と、自社ホームページやバナー広告など従来型を中心に手堅く運営する企業に分かれると同氏は予測する。
 昨年10月に会員制ブログを開設した三越の金沢春康ゼネラルマネジャーは「コミュニケーションの場を提供するのが趣旨で、一人の担当者で対応できる範囲で運営する。物販など極端に内容を広げることは避ける」と話す。

(日本経済新聞 2005.9)
[PR]
by jagxj6 | 2005-09-13 01:10 | Word-of-Mouth
<< 【米国】商品や人種による口コミ... 【米国】オンラインメディア広告シェア >>